80代現役の画家さんのアトリエを訪ねた。
すてきすぎ!
そこは下町のとっても年季の入った長屋の一角だった。
いきなり2階のくつろぎ部屋に案内されて、座卓でティータイム。
長年かかってそこら中にいろいろなものが堆積した庶民的な古い日本のおうちにお邪魔している感覚。
おいしいコーヒーをいただき、実はそのコーヒーは先生が淹れてくれたのよと聞く。
見ると、でかい業務用のミルがアトリエの片隅にあった。壊れていたのをひとからもらって、部品を自作して修理したそうだ。
次の展覧会の案内状を2枚いただいた。その他にも今韓国に数十点作品が行ってるそうだ。
先週見た個展の作品も新作だったのだ。
ああ、すごすぎ。この狭いアトリエで、今こんなにゆったりと教室をされていて、一体、いつどこで制作されているのだろう??
1階のアトリエ中にたくさんの自作の棚や道具がところ狭しと、でも、使いやすい位置に取り付けられていた。
私がいつもお世話になっている銅版画工房よりも狭いのに、道具はたくさんあるし、人もたくさん入れそう。
ん~、部屋の立体活用だな。壁面がとにかく様々な道具で埋まっているもの。
年季の入った机や、手作りの木の棚や引き出しや、ずらりとぶら下がったローラーや、、、
なんなんだ、この居心地のよさ!
ごちゃごちゃしてるけどモノがみんな生き生きと出番を待ってるからか、空間がイキイキしてるのだ。
その中にも茶色く日焼けした「創作ノート」とか、ひとからもらったと思われる絵とか、何十年モノもぶらさがっていたりして。
こんなにモノがあるのにプラスチッキーな入れ物がないのも気持よさの一因か。
キッチンには、窓の上の工夫された掛具にやかんが斜めに掛けられてかっこいい。あれやこれやがやはり工夫されてそれぞれの位置にきちんと収まっていて、アーティストの台所だなあと感心する。
いきなり作品を一枚くださった。えー!いいんですか?とうろたえる私の前で、センセイは、スパスパとフリーハンドでマット紙を切り、さくさくと絵を包んでくださった。
マット紙を切るための、K(センセイの名前)式マット切道具(当然自作)の、使い方を実演してくださった。木の板に金尺定規を取り付けたものなのだが、切る角度はフリーハンドである。
いつも生徒のためにセンセイが切ってくださるそうだ。
版を暖めるための、自作のK式電熱機もすばらしい。全面が均等にあたたまるようにニクロム線が内蔵されている。
インクも先生が混ぜて練って、チューブに詰めて、生徒はそれを使い放題。
銅版画といってるけど、ここでは亜鉛板を使っている。普通の銅版画用の腐食液は茶色くて、服をよごしてしまうからと、透明な硝酸の液に代え、すると銅では人体に悪いので亜鉛を使ってるそうだ。腐食室のアルミサッシは芸術的な結晶がびっしりとついていた。
創意工夫。
確かに、銅にこだわることないよな。ここでは銅版でなく紙版で制作する人さえいる。
センセイも銅版画にこだわらず、珪藻土を使ったり、釘をびっしり並べたりする作品をつくってはるし。
トイレがおかしかった。普通のトイレの水を流すのは紐を下にひっぱるけど、うちのトイレは上に棒で押し上げるのです、と。
壊れたのをやはり自分でなおされていたのだ。
他にもさりげなく、てすり棒が取り付けられていたり、ちょっとおしゃれにロールペーパーが掛けられる棚と棒がついていたり、といろいろ観察していたら、トイレ出てくるの遅いねと心配されてしまった。
あ、暗室もあったよ。
DMもセンセイ自ら作品を撮影、現像し、構成するそうだ。
もう、むらむらと創作意欲がわいてきた。作品の、よりも、工房の中をもっと使いやすくするDIY作戦!
80代現役スゴ技の秘訣は何でも自分で手を動かして作っちゃうことかもしれない。
作るって楽しい!何でも作ろう!
楽しく作ったものが自分の工房に堆積していく。堆積して出来てくる工房の「しわ」みたいなもの。
作品もきっと同じことなのかも。生きることも同じことだろな。
しわを刻んでいこう。
ちょっとわくわくしてきた。
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